年をとったせいか、最近物忘れがひどくて ーー とよくいいますが、ある脳の科学者によると、生物学的には年をとることによる記憶力の低下はそれほど顕著に表れるものではないそうです。もちろん痴呆症などの病気の場合は別ですが。
たとえば65歳の人と25歳の人を比べてみた場合。
65歳の人が35歳当時のことをほとんど覚えていないと嘆くことがあるかもしれませんが、それは30年も前のことだからある意味、当たり前といえます。
いっぽうの25歳の人にとってみれば30年前は存在しないわけで、幼児期の記憶がほとんどないことを考えれば、もっている記憶なんてせいぜい20年前ぐらいまででしょう。
そう考えれば、年をとるほど物忘れがひどく見えてしまうことも納得できます。
ただ、65歳の人は5年前のことも忘れていることが多い、という反論もあるかもしれません。
これに関しては、ひとつ面白い考察があります。
覚えられなくなるのではなく、覚えようとしなくなる
先日、70代になる母親が「デジカメの充電方法がわからないので教えてくれ」と言ってきました。
教えてあげることは簡単ですが、ボケ防止には少しは頭を使った方がいいと思い、「説明書はないの? たぶんはじめの方のページに絵入りで説明があるから見てみるといいよ」と言いました。
すると、「説明書は読んでもよくわからない」と読みもせずに答えます。考えることを停止してしまっているのです。
前述の科学者によると、「年をとることによる記憶力の低下よりも、覚えようとしなくなる好奇心の低下の方が問題だ」とのこと。
この場合はそもそも説明書を開こうともしていないわけですから、読解力や記憶力の問題ではなく好奇心が完全に低下しているものと思われます。
そしてこの好奇心の低下が、ものを覚えようとする作業も妨げてしまっているわけです。
・ ・ ・
たとえば電子書籍の話になると「この年になるとそういうのはよくわからん」と触りもせずに思考を停止してしまう年配者が多くいます(もっとも若い人の中にも「本はやっぱり紙じゃないと」といって拒絶してしまう人は多いのですが)。
一方、年をとってもタブレット端末や電子書籍端末を相当に使いこなしているおじさま、おばさまもたくさんいます。こういう方々は話をしていても飽きないし、書く文章もきっと面白いと思います。
私も決して若くはありませんが、好奇心はずっと忘れないようにしたいと思いますね。