オットセイの名前の由来・語源は?

オットセイという動物をご存じだと思います。たいていはカタカナで「オットセイ」と書かれるため、この名前を英語とかオランダ語とか西洋の言語由来だと思っている方も多いかもしれません。ですが、実はこの動物を「オットセイ」と呼んでいるのは日本だけ。英語では「fur seal(毛皮アザラシ)」といいます。では、なぜ日本ではこの動物を「オットセイ」と呼ぶのでしょうか? その由来を調べてみました。

もとはアイヌ語の「onnep(オンネプ)」から

オットセイは太平洋北部に生息するアシカ科の哺乳類。北海道周辺にもたくさんいたようで、アイヌの人々のあいだでは「onnep(オンネプ)」とか「onnew(オンネウ)」、「unew(ウネウ)」などと呼ばれていました。

そして、これらの発音が昔の中国に伝わったとき、「膃肭」という漢字が当てられました。当時の中国語がどういう発音をしていたのかは不明ですが、おそらく「膃肭」と書いて「オンネプ」に近い発音をしていたのでしょう。ちなみに現在の中国語ではオットセイは「膃肭獣」と書き、「wanashou(ワァナァショウ)」と発音するようです。

さて、オットセイのオスは繁殖期には多くのメスを従えてハーレムを形成することが知られています。そこでそんなオットセイのオスにあやかりたいと、その陰茎や睾丸は精力剤として漢方などで珍重されるように。その薬を「膃肭臍」といいます。「臍」はふつう「ヘソ」のことを指しますが、ここでは陰茎などを「臍」と称していたようです。一説にはヘソから陰茎までをいっしょに取り出していたからだともいわれています。つまり、「膃肭(オットセイ)」の「臍(陰茎)」で「膃肭臍」というわけです。

漢方薬の名前が動物そのものの名前に

そしてその精力剤は日本でも流通することになり、しだいにその名が世間に知られていきました。『コタン生物記』には以下のような記述もあります。

この海獣は慶長十五(一六一〇)年、徳川家康が「陰茎を膃肭臍という、薬にすれば腎気を増し陽気を助るとて貴重され」献上を命じてから急に需要が多くなり、享保三(一七一八)年からは毎年将軍家に献上するため、奥尻島に膃肭臍奉行が置かれるようになった。

(『コタン生物記』更科源蔵、更科光・著/法政大学出版局)

「膃肭臍」は日本の漢字読みの習慣では「オントツセイ」と発音するのが自然です。これが変化していき、やがて「オットセイ」となったわけですが、あくまでこれは陰茎を指す言葉。ですが、いつの間にか陰茎ではなく、その持ち主である動物そのものの名前を指すようになってしまいました。

ふだん私たちが水族館で「オットセイ! オットセイ!」と呼んでいるとき、本来の意味では「オットセイの陰茎! オットセイの陰茎!」と叫んでしまっているんだ、ということをときどき思い出してください。

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