昨日、ひのきの棒を持った5人組のモンスターがオラクルベリー市内のカジノに立てこもり、人質をとって現金5000Gを要求。駆けつけた勇者の一行が突入した10秒後にパルプンテを発動、1人が大きな竜に変身してしまった。
英語に比べ、日本語は主語が省略されやすい言語です。例えば、夏目漱石の有名な作品である『坊っちゃん』の書き出しは次のようになっています。
親譲りの無鉄砲で子供のときから損ばかりしている。小学校にいる時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かしたことがある。
この文章には、「誰が」に当たる主語がありません。あえて主語を記述するとすれば、「おれは 親譲りの無鉄砲で〜」となります。
このように、日本語では主語を省略した文章の書き方でも文意に影響が出ない場合が多々あります。
主語を省略していい場合といけない場合がある
しかし、省略してはいけない主語というものもあります。それを省略してしまったのがいちばん上の例文。
この例では、パルプンテを唱えたのが勇者の一行なのかモンスターなのかがはっきりしません。(念のため補足しておきますが、パルプンテというのは某有名ゲームに登場する呪文の名前です。使った人にも何が起こるかわからないスリリングな呪文です)
さらに、誰が竜に変身してしまったのかもわかりません。読み方によっては、人質がドラゴンになって炎を吐きまくったと捉えることもできます。このように、読者に誤解を与えるおそれがある場合には、主語を省略してはいけません。
(修正例)
昨日、ひのきの棒を持った5人組のモンスターがオラクルベリー市内のカジノに立てこもり、人質をとって現金5000Gを要求。駆けつけた勇者の一行が突入したが、その10秒後にモンスターがパルプンテを発動。勇者の仲間1人が大きな竜に変身してしまった。
では、どのようなときに主語が省略されてしまうのか。いちばん多いのは、やはり文が長くなってしまったときです。文が長くなり、含まれる動詞の数が増えてくると、書き手自身がそれらを管理しきれなくなります。その結果、必要な主語が落ちてしまうのです。
ですから、文はなるべく短くするのが望ましいのです。