『リバー・ランズ・スルー・イット』という映画を見たことがあるでしょうか。ブラッド・ピットが出演しているのですが、劇中、牧師で倹約家のお父さんが長男に文章の書き方を教えるシーンがあります。このお父さん、文章に対しても倹約家で、長男がもってきた原稿を見ては、「この部分は削ることができる」「まだ削れる」と、何度も何度も書き直して短くさせます。
これと同じことをみなさんにも実践していただきたい。つまり、文章の倹約家になってもらいたいと思うのです。
ページ数の多い本が優れているわけではない
「文をなるべく短くする」の記事では句点「。」で区切られた一つの文について述べましたが、ここでいう文章とは、本の始めから終わりといった全体のボリュームのことを指します。
例えば、一週間のアメリカ旅行について何か書くとします。そうすると多くの人は、「日本を旅立つ日。私はいつもより早く起きて、まず観葉植物たちにたっぷり水をあげ、そしてしばらく食べられないであろう味噌汁を……」と、時系列にそって細かいことを延々と書こうとします。
こういう文章の書き方をしてはいけません。
そんなことをやっていたら、日本を離れる前に、書く方も読む方も力尽きてしまいます。ここは思い切って、「ハドソン川の長いトンネルを抜けるとマンハッタンだった」ぐらい早送りしてもいいです。それくらいの気持ちでないと、文章はどんどん長くなってしまいます。
ライターなどのプロが仕事で文章を書くときには、たいてい400字とか1200字といったように文字数が指定されています。ですから、その範囲で書けることを書きます。
やっかいなのは、自叙伝や自分史といった文字数が決められていない本の原稿です。文字数の制限がないから、つれづれなるままに、心にうつりゆくことを、そこはかとなく書いているうちに膨大な量の原稿になってしまいます。それで、「300ページにはなると思うのですが」と原稿を持ち込まれる方もいますが、読んでみると30ページ程度の内容なんですね。
本の厚さで自身のステータスを誇示したいというのならそれもいいかもしれませんが、「さすが、この人は文章も面白いな」と思わせたいのなら文章のリストラを断行するべきです。
では実際に、どこをどう削ればいいのかということについては……おっと、ちょっと文章が長くなってしまいましたので、また次回に。