障害者を障碍者と書くことになった経緯

文章の書き方

近年、運動会で「障害物競争」という名称を使用しない学校があるといいます。なんでも「障害者」を連想するからだそうで、「サバイバルレース」とか「山あり谷あり競争」などといった呼び方に変更しているそうです。

日本語を知らない外国の人が言っているのならまだしも、人にものを教える「教師」が集まっている職場でこのような判断が下されていることに疑問を感じてしまいます。

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「碍」「がい」を使う例が増えている

さて、それとはまったく別の問題として、「障害者」という言葉を「障碍者」や「障がい者」と書くべきだという意見があります。読み方はどれも「しょうがいしゃ」です。

理由は、「害」という字を用いることで障害者が周囲の人に害を及ぼしているという印象を植え付けるから、または「害」という字そのもののイメージが悪いから、といったところです。

前者の理由は「障害物競争」と同じであまり納得できませんが、後者の方はわからないでもありません(個人的には悪いイメージはありませんが)。

昔は「障碍(障礙)」と書くものだった

元々、「障害」という言葉は「障碍(障礙)」という漢字だったのが、戦後の国語改革で「碍(礙)」という字が当用漢字に含まれなかったため、代わりに「害」という字を当てることになりました。いわば「当て字」です。「碍」は「礙」の異体字であり、同じものと考えて差し支えありません。

問題なのは、「碍」と「害」では漢字のもつ意味が違っていたということ。どちらも「がい」という発音は同じですが、「碍」は妨げるという意味でありそれ自体にマイナスのイメージはありません。

ちなみに、「碍」を使った単語には「碍子(がいし)」というものがあります。電線に付いている白い磁器製の絶縁体のことで、電気の流れを妨げるものという意味です。碍子を製造している日本碍子という会社がありますが、「碍」という字があまり使われない字だからなのか通称は「日本ガイシ」となっています。

↑碍子のひとつ「玉がいし」(『Wikipedia』より画像引用)

「障害者」を「障碍者」「障がい者」とすれば問題は解決するのか

「元来がそういう書き方だったのだから、『障害』は『障碍』に戻すべき」というのはそれほど突飛な意見ではありません。ただ、「碍」を当用漢字に含めなかったのにも理由があり、実際、2009年から行われた常用漢字の改正審議でもあらためて「碍」の字の追加は拒否されています。

そこで、「碍」という字を使わずに「障がい者」という書き方を採用する自治体が出てきましたが、これはこれで反対意見も多いようです。例えば、漢字とひらがなを使う「交ぜ書き」は文章の意味を把握しにくくするということで文科省などはそういった使い方を嫌っています。また、「『障がい者』と書かれる方がむしろ嫌だ」という障害者自身の意見も意外と多いようです。

共同通信社が発行している『記者ハンドブック』では「障害」に関してはそのまま「害」の字を使うことをすすめています。ただし、「障害を持つ」という表現には、望んで障害を持ったわけではないと当事者から批判があることに配慮し、「障害の(が)ある」と書く、といったガイドラインは記されています。

また、次のような意見もあります。

差別か差別じゃないかは相手にもよると思います。
ちなみに私は身体障害者ですが全然気にした事ありません。

害の字が嫌と考えている人にとっては差別と考えるのかもしれませんが、事実、健常者と違って障害はあるのですから今更障害者が障がい者になっても何も思いません。

(『Yahoo! 知恵袋』より引用)

この問題に関する情報を集めてみると、どうも障害がある人たちはあまり表記の問題には関心がなく、どちらかというと周囲の人間が過剰に騒いでいるという印象を受けます。

「障害物競争」を「サバイバルレース」と言い換えることで本質的な問題の解決になるのか、むしろ過度な「言葉狩り」が障害者を悪者に仕立ててしまうのではないか、と思ってしまいます。

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