カレンダーや暦、はたまた日本史の教科書などでときどき目にすることもある「甲子」や「戊辰」といった語句。「甲子園」や「戊辰戦争」など音読みで「コウシ」や「ボシン」とする読み方はなんとなくわかるけど、日本式の読み方には馴染みがない方も多いと思います。
読み方は「みずのととり」「キユウ」。その語源は?
「癸酉」は訓読みで「みずのととり」、音読みで「キユウ」と読みます。
癸酉の「癸」は「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」という10種の要素からなる集合の10番目に当たる文字です。この集合を十干(じっかん)と呼び、古来よりものの序列や階級などを表すのに使用してきました(焼酎の甲類/乙類や危険物取扱者資格の甲種/乙種など)。十干を並べて読む場合は通常、音読みで「コウ・オツ・ヘイ・テイ・ボ・キ・コウ・シン・ジン・キ」と読みます。
癸酉の「酉」は「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」という12種の要素からなる集合の10番目に当たる文字です。この集合を十二支と呼びますが、一般的にはネズミやウシといった動物をそれぞれに当てたものとして知られていますね。それぞれの読み方は「ね・うし・とら・う・たつ・み・うま・ひつじ・さる・とり・いぬ・い」となります。
この十干と十二支を組み合わせたものを干支(えと)と呼び、暦では古くよりそれぞれの年にこの干支を割り当ててきました。ちなみに2018年の干支は「戊戌」、2019年は「己亥」、2020年は「庚子」となります。
「癸」=「みずのと」という読み方は陰陽五行説から
さて、「癸酉」の「酉」を「とり」と読むのは上の十二支の説明でわかったと思いますが、では「癸」を「みずのと」と読むのはなぜでしょうか?
「みずのと」を別の字に置き換えると「水の弟」となります。これは陰陽五行説に基づくもので、まず五行説により十干は「木・火・土・金・水」といった五つの要素に分けられます。
甲・乙=木
丙・丁=火
戊・己=土
庚・辛=金
壬・癸=水
さらにそれぞれを陰陽説に基づき陽(兄)と陰(弟)に分けます。
甲=木の兄(きのえ)
乙=木の弟(きのと)
丙=火の兄(ひのえ)
丁=火の弟(ひのと)
戊=土の兄(つちのえ)
己=土の弟(つちのと)
庚=金の兄(かのえ)
辛=金の弟(かのと)
壬=水の兄(みずのえ)
癸=水の弟(みずのと)
そうして分けられた十通りの読み方に十二支をつなぎ、「癸酉」=「みずのと・とり」となります。
60年で暦がひと回りすると「還暦」
さて、この十干と十二支の組み合わせをそれぞれの年に割り当ててきたわけですが、戦後はじめての「癸酉」は1993年にやってきました。その後、
1993年=癸酉(みずのととり)
1994年=甲戌(きのえいぬ)
1995年=乙亥(きのとい)
1996年=丙子(ひのえね)
1997年=丁丑(ひのとうし)
1998年=戊寅(つちのえとら)
1999年=己卯(つちのとう)
2000年=庚辰(かのえたつ)
2001年=辛巳(かのとみ)
2002年=壬午(みずのえうま)
2003年=癸未(みずのとひつじ)
2004年=甲申(きのえさる)
2005年=乙酉(きのととり)
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と一年ごとに十干と十二支をひとつずつ変えながら割り当てていくと、2003年に再び「癸」が現れます。このときの十二支は8番目の「未」となります。
10種からなる十干と12種からなる十二支を組み合わせいくのですから、単純に計算すると 10 x 12 で120種類の干支が考えられますが、実際には2つずつズレていくので組み合わせとしては60種類となります。
わかりやすく例えると、「癸」は「うし」「うさぎ」「へび」「ひつじ」「とり」「いのしし」とはパートナーになりますが、「ねずみ」「とら」「たつ」「うま」「さる」「いぬ」とはパートナーとなる機会がないということです。
そして2053年に再び「癸酉」がやってきます。もし1993年(癸酉)に生まれた人がいたとしたら、60歳になったときに再び生まれた年と同じ「癸酉」が訪れます。これを暦がひと回りしたということで「還暦」と呼び、現在では一般的に60歳になることをこう呼ぶようになりました。
書体ごとの表記

明朝体

教科書体

行書体