Q. 「生憎」という漢字の読み方・由来・語源は?

「生憎」という語を辞書で調べると「期待や目的にそわない状況になって、都合が悪く残念なさま(『大辞林』三省堂)」とあります。用法としては「生憎な○○です」いったように形容動詞として使う場合と、「生憎と○○です」のように副詞として使うケースがあります。

読み方は「あいにく」。その語源は?

「あいにくな天気ですね」や「あいにくと留守にしております」といった使われ方をする「生憎」。もともとは「あやにく」といっていたものが近世以降に「あいにく」に変化しました。「あや」は「ああ」とか「あら」といった意味の感動詞で、「生」という字に意味はありません。当て字です。まれにですが「生」の代わりに「合」を使って「合憎」と書くこともあります。

「憎」は「憎し」という古語からきており、合わせて「ああ憎らしい」といった意味になります。

語源としては「ああ憎らしい」という感情を表す言葉でしたが、その後、そのような思いを抱かせる状況を示す言葉に変化しました。それにともない、自分の場合だけでなく、「おあいにくさま」など相手の気持ちを思いやる場合にも用いられるようになりました。

現代においては相手に対して「憎らしい」という感情を示すものではありませんから、目上の人に使っても失礼にあたるということはありません。

関連語(古語)

生憎心(あやにくごころ)
 意地悪な心。腹立たしい心。「いとけしからぬ御生憎心なりかし(『源氏物語』)」
生憎し(あやにくし)
 思いどおりにならない。具合が悪い。「さも生憎しき目を見るかな(『宇津保物語』)」
生憎だつ(あやにくだつ)
 人の嫌がることをさらにする。「あなたこなたに住む人の子の四つ五つなるは、生憎だちて、物とり散らしそこなふを(『枕草子』)」

(『大辞林』三省堂)

使用例

関東大震災は生憎九月一日だった。刷り上がり、出荷寸前の『文藝春秋』九月号は、印刷所が焼けたため(『マガジン青春譜』猪瀬直樹・著/小学館)

換えたっていいけどサ、生憎と長屋にゃ押入なんて上等のもんはないからね(『覘き小平次』京極夏彦・著/中央公論新社)

文学青年だったら、瞑想にふけりたくなるような雰囲気だが、望月は、生憎、そんな精神は持ち合わせていなかった(『秘めたる殺人』西村京太郎・著/双葉社)

浅川がここに来たのは一応仕事のためである。「あいにくと、仕事でね」浅川は床に置いてあったポータブルワープロを持ち上げて見せた(『リング』鈴木光司・著/角川書店)

あいにくさまだね。そうかんたんにくたばってたまるものか、二千年も生きてきたこの超古代生物(『ヤーンの朝』栗本 薫・著/早川書房)

あくせくするようすを拝見しようかと考えてみたが、あいにく主人はこの点に関してすこぶる猫に近い性分である(『吾輩は猫である』夏目漱石・著/ポプラ社)

『記者ハンドブック』での扱い

共同通信社が発行している『記者ハンドブック』では、「あいにく」はひらがな書きにするよう勧めています。

書体ごとの表記

明朝体


教科書体


行書体

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