Q. 「落款」という漢字の読み方・由来・語源は?

「落款」という語を辞書で調べると「書画が完成したとき、作者が署名・押印すること。またその署名・押印(『大辞林』三省堂)」とあります。上の写真でいうと左端にあるサインと朱色の印鑑を書いたり押したりすること、もしくはそのサインや印影そのものを指すということですね。

読み方は「らっかん」。その語源は?

「落款」は「らっかん」と読みます。もともとは「識(らくせいかんし)」という語を略したもので、上に記したとおり書画が完成したときに製作日やその作品の来歴、詩文などを書き記す行為をいいます。同時に押す印章を「落款印」といいますが、現在ではこの落款印を指して「落款」と呼ぶことも多いようです。

「落成」という語については後ほど詳しく書きますが、この言葉は日常でも建築工事が終了した際に「落成式」といった形でよく使われ、ここでは書画などの作品が完成したことを意味します。

「款識」について辞書には「鐘・鼎などに鋳出し、または刻み込んだ文字。凹字(陰文)を款、凸字(陽文)を識という(『大辞林』三省堂)」と書かれています。少しわかりづらいですが、もともとは金属などに記された凹凸のある「文字」のことを言っていたと考えられます。それがやがて金属のものだけでなく、書画などの平面に書かれた文字も指すようになったのでしょう。

まとめると「落成款識」というのは「作品が完成したときに記す文字」ということになります。

なぜ建物の完成が「落成」と呼ばれるのか?

さて、先ほども書いたとおり「落成款識」の「落成」には、建築工事が終了したという意味があります。ではなぜ建築物が完成することを「落」と書くのでしょうか?

その由来を「こけら落とし」という言葉だとする人もいます。「こけら」とは木屑のことを指しますが、工事の最後に屋根などに残ったけずり屑を払い落とすことから、劇場が完成してはじめて行う興行を「こけら落とし」と表現しました。この「落とす」という字が「落成」につながっているということです。

ただもう少しよく調べていくと、『大紀元』という中国語サイトに「 為甚麼建築物完工稱為『落成』? (なぜ建物の完成が「落成」と呼ばれるのか?)」という記事がありました。その中に、

這裏所提到的「落」字,是指古代宮室築成時舉行的祭禮。這是「落」字在古代的另一種用法
《中略》
所以「落成」的原意,是指古代宗廟或宮室築成時舉行的祭禮,《中略》後來,「落成」就用來泛指建築物完工。

(大紀元)

という記述があります。簡単に翻訳しますと・・・

ここで言及されている「落」という言葉は、古代の宮殿が建てられたときの儀式を指しています。これは、古代の「落」という言葉とは違った使い方です。
《中略》
ですから「落成」という語の本来の意味は、古代の寺院や宮殿の建設中に行われた儀式を指しています。《中略》その後、「落成」は、建物の完成を表すために使用されました。

ということになります。つまり、古代の中国では宮殿が建てられたときに行う儀式を「落」といったようです。

使用例

一つには山桜、一つには田園の山水とでもいった閑雅な風景が画かれている。私は落款を見た。が、読めなかった。「誰です。」と顔を赤らめ、おどおどしながら聞いた(『津軽』太宰 治・著/角川書店)

おどろくべき報告を受けた。表具師が表装を剥いだところ隠れていた部分から、雪舟の落款が発見されたのである(『浮雲の剣』古川 薫・著/新潮社)

「With malice toward none, With charity for all」で、それぞれ「稲造」「Inazo Nitobe」との落款がある。札幌農学校教授、第一高等学校長、東京女子大学長、国際連盟事務次長などを歴任した新渡戸稲造である(『近代日本の夜間中学』三上敦史・著/北海道大学図書刊行会)

書体ごとの表記

明朝体


教科書体


行書体

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