Amazon謹製ソフトが登場! ところで「謹製」ってどういう意味?

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ITmedia の eBook USER というサイトに「自分でスキャンしたファイルをKindle本に変換できるAmazon謹製ソフトが登場」という記事が出ていました。

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記事によると、Kindle convert と名付けられたこのソフトは個人がスキャナで取り込んだ書籍データをKindle端末(アプリ)で読める形式に変換してくれるというもの。単純に画像を固定レイアウト形式のEPUBに変換するというわけではなく、OCRを使って文字はテキストデータとして保持するようです。ただし、現時点では米国のみでの展開とのこと。

なるほど、日本での公開は未定のようですが、自炊(自ら所有する紙の本をデジタルデータに変換すること)ファンには気になるニュースでしょう。

ですが、

今回のテーマはそこではありません。「謹製」の使い方です。

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「謹製」は「純正」という意味ではない

『大辞林』では「謹製」の意味を以下のように紹介しています。

きんせい【謹製】
つつしんで製造すること。食品の製造者などが用いる語。

例えば、ドラマ『JIN-仁-』で南方先生が和宮内親王に「安道名津(あんドーナツ)」を献上するといった場面で、「仁友堂謹製」と使うのが正しい使い方です。

ところがどういうわけか、近年IT業界において「メーカー純正」という意味で「謹製」を使う例が増えています。

これに対する「それ、間違ってるよ」という指摘も前々からあちこちで書かれていて、「情報強者」であるIT関連の人たちがそれに気づいていないはずはありません。ですが、なぜかそれを正そうとはしないようです。

単にライターが無知であったのならまだわかりますが、ITmedia のような大手サイトの編集責任者がそれを放置している理由がわかりません。

同様に、コンビニやファミレスでよく耳にする「〜でよろしかったでしょうか?」「〜円からお預かりします」といった言い方を、本部や本社のエラい人はどうして指導しないのでしょうか。ちゃんとしたデパートやレストラン、ホテルでは接客用語を細かく定めているはずです。

もしかしたら、「私どもはそんなちゃんとした店ではございません」ということを親切にアピールしてくれているのでしょうか。

大手サイトに蔓延する「謹製」の誤用

今回はたまたま ITmedia の記事が目についたので例に挙げましたが、あらためて調べてみるといろいろなサイトで「謹製=純正」という使い方が見られました。

「ついに真打ち登場? マイクロソフト謹製SNS『Socl(ソーシャル)』」(GIZMODE/2013.12.23)

「ゾンビXPを撃ちまくれ! 米Microsoft謹製の「XP撃退ゲーム」が話題に」(Impress Watch/2014.4.16)

「英国諜報機関謹製、たのしい「暗号化技術学習アプリ」が無料公開中」(WIRED/2014.12.15)

「はてな謹製ニュースアプリ「Presso」は「はてブ」のエントリーモデル」(TechCrunch/2014.03.26)

「Nexus9:圧倒的性能を誇るAndroid5.0のGoogle謹製タブレット」(週アスPlus/2014.12.1)

「Windows 10で登場するMicrosoft謹製の最新ブラウザ「Spartan」の画像が流出」(GIGAZINE/2015.1.13)

「Google謹製スマートフォン「Nexus 6」に関する噂まとめ」(livedoor NEWS/2014.10.14)

「ミニ謹製のピックアップトラック」(OPENERS/2014.5.2)

「CC2謹製の『.hack//Link』完全設定資料集『.hack//Archives_04』が販売開始 既刊の値下げキャンペーンも実施」(ファミ通.com/2014.1.23)

「Odin」という名称で知られる、韓国LG謹製のSoCこと「NUCLUN」。「「LG F490L Liger」の正式名称は「LG G3 Screen」に ―実機画像とベンチマークスコアがリーク」(ガジェット速報/2014.10.24)

検索してヒットするのはやはりIT関連のニュースが多いので、やはりその業界で広く蔓延しているようです(マイクロソフト関連の記事が多く感じられるのは気のせいでしょう)。

ちなみに上の例で挙げた最後の「ガジェット速報」の記事には以下のようなコメントが書き込まれていました。

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謹製…
誤用が大分一般化したとはいえ、ライターさんが使うのは相応しくないな。
——————————
 朝日や毎日など、ろくな日本語が書けない記者が大手新聞社で記事を書いている現在。
 そうかたいこと言わないでも、、、、。

 言いたいことは理解できるけどね。

やさしい読者ですね。

私も他人の誤用を見つけて鬼の首をとったようにそれを公開しているようではいけません。

「謹戒」いたします。

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